最後に、現場の薬剤師が特に気にするであろう「他店舗から買った薬の品質責任と販売責任」についてお聞きしたいと思います。例えば、他の薬局から⼩分けで買った薬に、なんらかの問題があり患者様へご迷惑をかけてしまうようなケースです。
なるほど。具体的にどんなケースが想定されますか?
例えば、リザベン点眼液0.5%は冷所保存によって結晶化し、元に戻らないことが知られています。薬局Aで保管していた際に結晶化し、それを知らずに薬局Bへ譲渡したとします。薬局Bでも結晶化していることを知らずに患者様へお渡ししてしまい、その結晶によって眼球を傷つけてしまった、というケースではいかがでしょうか?
その場合、通常「調剤した薬剤師が調剤に関して責任を持つ」と解釈ができるため、薬局Bで医薬品を患者様へ渡した薬剤師が責任を問われる可能性があります。もっとも、薬局Aに全く落ち度が無かった場合は別ですが、薬機法8条1項、9条1項1号により、「薬局は仕⼊れた薬を適正に管理し、疑義がある場合に必要な検査を⾏う」義務があるので、他の薬局から購⼊している以上、責任が無いというのは難しいかもしれません。
そうなんですね。あらためて薬剤師の重責を感じます…。このケースの場合、譲渡元薬局Aにも管理上の問題があるのではないのかと思いましたが、いかがでしょうか。
これが難しいポイントです。薬局Aで結晶化したことを認識していないため、薬局Aの責任と断定ができません。現実でも、メーカー、卸、薬局、どのタイミングで結晶化したのか証明することが難しいかと思います。ただ、患者さんに問題が発⽣した場合、調剤した薬剤師や、鑑(監)査者、その店舗の管理薬剤師、及び薬局開設者に対する責任が問われることは⼗分考えられるので、状態確認は注意した⽅が良いと思います。
わかりました。ちなみに弊社では、リザベン点眼液のような品質変化が発⽣しやすいお薬は、取扱いを禁⽌することでリスクを減らすようにしています。
それが安全かもしれないですね。
では別のケースとして、患者様へお渡しする前に問題が⾒つかった場合はいかがでしょうか。例えば薬局Aが、PTPシートの破れに気づかず、薬局Bへ薬を譲渡したとします。薬局Bでも受取時に気付かず、しばらくしてシートの破れに気づいた場合はいかがでしょうか。
具体的な状況にもよりますが、その場合、譲渡元薬局Aが債務不履⾏に当たる可能性があると考えられます。そのため薬局Bは、薬局Aに正しい医薬品との交換⼜は返品を要求することができます。場合によっては瑕疵担保責任が問題になるかもしれません。また、仮にその薬が原因で何らかしらの問題が起きた場合、状況によっては⺠法415条により、損害賠償の請求を薬局Aへ要求できる場合もあります。
そうすると薬局間の売買では、薬を受け取る際に破れやつぶれといったダメージが無いかを確認することが重要ですね。
薬局だけでなく、卸、メーカー、それぞれの⽴場においても医薬品の適正管理に関して薬機法に定められています。医薬品流通においては、それぞれの段階で薬の適正管理が重要といえます。
ありがとうございます。弊社の場合、先ほどお話した通り、買取検品時の商品の取り違えや、破損、期限ちがいが発⽣しないよう、徹底した管理を⾏っております。万が⼀にも、弊社からご購⼊された商品にそのような問題があった際は返品対応をしておりますし、また、売却元の薬局様に原因が無い場合は、責任を転嫁することもございません。
なるほど。ファルマーケットさんが責任を持って買取検品をしているのですね。それならば、御社のような第三者の介在は、薬局間の直接売買と⽐較し、検品精度を⾼める要因になるとも考えられますね。
ありがとうございます。卸としての責務と、医療人としての倫理観を強く意識し、徹底した品質管理に努めていきたいと思います。
そうですね。是⾮、医薬品流通の適正化という、業界全体のテーマに貢献していただきたいと思いますし、なによりも患者さんのために、医薬品の安全性と信頼をより強固なものにしていければいいですね。
本日はこのような機会をいただき、本当にありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。御社のご活躍を期待しています。